映画ファンなら(映画ファンでなくとも)誰でも知っているタイトルのひとつ『ブレードランナー』
あまりにも馴染みすぎていて疑問に思うことがありませんでしたが、この単語の由来とかあるのだろうか……?
今回は、そんな『ブレードランナー』という言葉の由来を調べてみました。
「ブレードランナー」(blade runner)―――直訳するなら「刃 走者」となります。
単語としても作品としてもあまりにも意味不明な言葉です。
パッと思いつくのは<剣の刃を渡る>ということわざ。
きわめて危険なことをすることを表すこのことわざですが、走っていないし日本語のことわざだしなぁ……(ためしに英訳してみた所
そもそも、作中でデッカードが「ブレードランナー」と呼ばれるシーンなんてなかったように思います。
このワード自体、冒頭の世界観の説明でしか見かけなかったと思いますし……
で、原作となるフィリップ・K・ディックの小説『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』を見てみると「ブレードランナー」なんて単語は存在すらしていません。
では、どこからこの単語が現れたのか、調べてみたら案外あっさりと出てきてしまった……
どうやらWikipediaによると、SF作家アラン・E・ナースが書いた小説『The Bladerunner』で登場する単語らしく「非合法医療器具(blade)の運び屋(runner)」という意味合いらしいです。
これにて解決!……と言いたいところですが、非合法医療器具=bladeというのはイマイチぴんと来ません。どうやったらそんな意味合いになるのか……
そこでもう少し深堀り。
どうやら、アラン・E・ナースの『The Bladerunner』の世界観は、優生・劣生の区別がある近未来。劣生の人々は子孫を残さないよう、断種手術を受けさせられるのですが、それを受け入れられない人のために、非合法に子孫を残せるようにする手術を受ける裏ルートが存在しています。
その手術道具……メスのような刃(blade)が付いた医療道具を走って届ける人物こそ「ブレードランナー」というわけです。(主人公は警官をしながら「ブレードランナー」でもある男)
なるほど、これでスッキリ……しましたが、俄然興味の沸いてきたアラン・E・ナースの『The Bladerunner』を読んでみたいと思いきやまさかの未翻訳……モヤモヤが残ることに。
なにはともあれ、この『The Bladerunner』が、脚本家であるハンプトン・ファンチャーの手に入り、デッカードの職業を決める際に引用することになったのだとか。(そこに至るまで『The Bladerunner』を映画化しようとして巧くいかなかったりといった経緯もあったそうです)
で、そのままタイトルもデッカードの職業「ブレードランナー」もタイトルにすることになり、ハンプトン・ファンチャーが付けていたタイトル『デンジャラス・デイズ』はお蔵入りとなりました。(リドリー・スコットと脚本の意向が合わずに衝突があったりしたのはまた別の話……)
まさに名作に歴史ありです。
てっきり監督であるリドリー・スコットか、脚本家であるハンプトン・ファンチャーあたりが付けたのだと思っていましたが、まったく無関係なSF作家の作品から取っていたんですね。そりゃ原作に出てこないわけだ。
デッカードの職業名が決まっていることで、物語に何か影響があるかといったら特にありません。
しかし、ブレードランナーの存在を説明した冒頭の文章、あれがあることによって作品の世界観に引き込まれるのは確かです。
名称ひとつで作品の見方がガラリと変わる、そんなSF映画の世界観の重要さに改めて気づかされる雑記となりました。